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2009年2月 6日 (金)

東京大学と共同で研究シンポジウムを開催しました

いささか旧聞のきらいもあるのだけれど、本09年1月22日、東京大学と産学連携共同研究シンポジウムを開催した。

タイトルは「情報技術の未来とITベンチャー/大学の役割」。
http://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/kigyou/seminar/090122venture.html

ソニーコンピュータサイエンス研究所の所長である北野宏明さん(東大の客員教授も兼任されている)に基調講演を、また、メタWeb研究所社長の鈴木潤一さん、SIGHT ENTERTAINMENT JAPAN社長の斎藤武一郎さんに、ITベンチャーの現場からということで、話をしていただいた。

その後講演者の皆さんと、産学連携本部の各務教授、わたし五内川も交えて、パネル・ディスカションを行うという構成だった。

本シンポジウムを開催したのは、「100年に一度の経済危機」にあって、この危機の先にどのようなIT技術の進歩があり、社会的インパクトが待ち受けているのか、ということを、この機会に改めて考えてみたかったからである。

簡単に内容を振り返ってみよう。

北野さんからは、IT技術をどのような分野に応用していくか、その出口が重要だということで、グローバルかつマクロな視点からスケールの大きいお話をいただいた。

米国オバマ新政権の科学技術戦略、現在の地球温暖化をはじめとする環境問題、ご自身のシステムバイオロジー研究など多岐な事例も交えて、コンピュータの解析能力がどのような問題に適用されるべきか、あるいは実際に応用が可能になってきているのか、といった点で興味深いお話を聞くことができた。

続く鈴木さんからは、システム構築とデータ処理の歴史を振り返って、本当に必要なデータとは何か、それをまだIT業界は提供できていないのではないか、という問題提起をいただいた。現状はテキストデータをかろうじて管理する技術ができたばかりであり、各個人にあわせた自分自身のためのデータをどう扱うかがこれからの課題だ、ということである。

斉藤さんからは、ハリウッドでの経験をもとに、CGやゲームといったエンターテイメントの分野に関するお話をいただいた。その中で、日本は映像技術のみならず、企画・マーケティングのグローバル化、開発ツール・インフラのオープン化で、遅れを取っているのではないか、という強い危機感の表明があった。

続いてパネル・ディスカションに移る。

一番目のテーマは、今後の情報技術の発展の方向性についてである。

これによると、現在のコンピュータは線形モデルに関しては相当の計算能力があること、しかし今問題になっているのは、力業でもなかなか解きにくい非線形の問題であること-といった指摘がなされた。

数学的にも匠の余地がまだまだ残っており、人間のひらめきや、メソドロジーの工夫が重要であること、現象を捉えて近似値を探るところにITの新たな領域がある、ということだ。

パネルの次のテーマは、国際標準の問題だった。

とりわけグローバルな視点からいえば、日本の研究者は海外の標準化議論でほとんど発言しない、といった具体的な問題など指摘された。

一介の個人や起業家であっても、世界の標準化コミュニティに対して思い切って発言したり、メールでどんどん発信していってほしい、ということだ。

特に今回の三人の経歴を見ると、北野さんは国際的な共同科学研究プロジェクトを運営しており、鈴木さんもオラクル在籍時代にシリコンバレーで活躍、斉藤さんはハリウッド企業を事業パートナーにしている。

いずれも国際舞台での活動を実践されている方々で、強いメッセージが発せられているように思う。

これを受けて、各務先生からは、産学連携本部でも、海外大学との連携含め、グローバルな取り組みを更に強化していく、というコメントもあった。

最後のテーマは、大学の役割というところで、東京大学に対しても「もっと外国人や女性の比率をあげてはどうか」「プロフェッショナルな人材養成を」「あちこちに議論のためのホワイトボードを掲げて埋め尽くしたらどうか」など、おもしろい意見もいただいた。

総じて、コンピュータ能力がもたらす社会の方向性と、大学やITベンチャーに期待する人材の資質について、多くのヒントが得られたように思われる。

私自身も、こうした視点を盛り込むことで、次の共同研究テーマを発展させていければ、と思っている。

ともあれ、講師の皆さん、聴講にお出でいただいた皆さん、産学連携本部のスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。

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