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2007年1月31日 (水)

不実施補償(共同研究の成果帰属④)

(1月26日より承前)

大学が特許等発明の実施機関とはならない(なれない)ことから、共同発明先(共有権者)の企業が、実質的に当該特許の独占状態を作り出せる。

これに対して、大学が補償を求めるのが、不実施補償であった。

しかし、この不実施補償、企業にはすこぶる評判が悪い。

独占ライセンスを求めているわけではないのに、どうして不実施補償をしなければならないのか、というのが、企業側の論理だ。

更に言えば、建前としては、大学がその特許を第三者にライセンスしようがしまいが、それは本質ではない。

あくまで、企業が独占ラインセンスを求めるかどうか-という意志の問題と見ているようだ。

他方、大学側は特許使用の「実質的な」独占状態を問題にするから、これはで話があわない。

かくて、落としどころを模索する過程で、いろいろな笑える話も出てくる。

例えば、企業の担当者からすると、「不実施補償」なる言葉が悪くて、社内の稟議を通せない。

だから別の名目、例えば共同開発費に上乗せするとか、寄付金にするとか、であれば、社内の了解を取れる-という例もあると、聞いたことがある。
(ただし寄付金を対価として使うことは、寄付という本来の性格を否定することになるので薦められない-筆者注)

ともあれ、交渉ごととなれば、お互いの力関係、どちらがそれをより望むのかといった重要性の問題、更には信頼関係や、当該特許以外のノウハウの所在、今後の協力関係、価格なども、考慮の要因にはいってくるだろう。

大学側の立場は一貫しているが、産学の交渉が時にタフになる所以である。




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2007年1月26日 (金)

不実施補償(共同研究の成果帰属③)

(1月24日より承前)

さて、特許法における共有特許の扱いをまとめておくと、次のようになる。

①特許を自分で実施するにあたっては、他の共有権者の同意を必要としない。

②特許を第三者にライセンスないし譲渡するには、他の共有権者の同意を必要とする。

①に関していうと、前日のブログで述べたとおり、企業はその特許を自分で実施できるが、大学は(そもそも事業主体ではなく研究機関、教育機関なのであるから)自分で特許を使って、商売をやるようにはなっていない。

つまり、①の観点からみると、企業・大学という共有権者のうち、企業だけが利益回収できる(可能性がある)のであった。

大学は蚊帳の外である。

であれば、大学としては、第三者に特許をライセンスして回収したい、と考える。

ところが、これも簡単にはできない相談で、②の条項が引っかかってくる。

すなわち、共有権を持つ企業の同意を得ないと、第三者へのライセンスはできないのだった。

当然、共有権を持つ企業としては、自社だけで特許を使用したいわけで、大学から第三者へのライセンスを拒否できるのだ。

よって、大学は、第三者へのライセンスや譲渡も不可能となり、やはり資金回収できない。

すなわち、大学から見ると、共有企業は、実質的に独占的な特許使用を行いながら、大学には一円も還元していないことになる。

それもこれも大学が特許の「不実施機関」であることから来ているわけで、仮に民間企業同士が共有特許を持ちあっているとしたら、こんな事態にはならない可能性が高い。

民間同士の持ち合いなら、おそらく、お互いに権利「実施者」としてのパワーを、前面に押し出してくるだろう。

こうしたことが背景となり、大学は、「不実施」による共有企業の「実質独占ライセンス状態」に対して、金銭的対価を求めることになる。

つまり①に戻って、企業が自社で特許を実施する場合にも、有償にしてほしい、ということだ。

これが「不実施補償」である。(続く)

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2007年1月24日 (水)

不実施補償(共同研究の成果帰属②)

共同研究の成果配分で、最大の焦点の一つになるのが、不実施補償である。

これは、産と学の違いが明確に出るところだ。

少し説明してみたい。

共同研究の結果、生み出された特許が、大学と企業の共有になったとする。

このとき、両者ともに、その特許を使って、自分で事業展開を図る権利を持つことになる。

その特許を自ら使う限り、もう片方の共有者に、特許料を払う必要はない。

これが共有特許のポイントだ。

ところが、大学は、企業と違って、実際に事業を行う主体とはなりえない。

大学は、「不実施」機関なのである。

すると、企業だけが、一方的にその特許を使って自由に事業展開し、利益をあげることができる。

こうして、大学には、配分が回ってこない・・。

それは困るということで、大学が「不実施」機関である以上、企業は実質独占的にその特許を使えるのだから、ある種の独占ライセンス契約とみなして、大学の「不実施」を補償すべきだ、というのが「不実施補償」の考え方である。

しかし、これがなかなか一筋縄ではいかない議論の始まりとなる。(続く)

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2007年1月19日 (金)

共同研究の成果帰属①

(11月30日より承前)

去年の11月から、だいぶ期間が空いてしまった(この間のブログは活動報告や四方山話も多かった)けれども、再び、産学の「共同研究」を巡るテーマに回帰しよう。

今回は、共同研究の「成果」を誰にどう帰属させるか、ということを考える。

当然、共同研究の成果帰属は、非常に重要な事前の取り決め事項の一つである。

契約内容によって、その後の研究にかけるモチベーションやら体制やらが影響を受けるので、大変重要な取り決め項目だ。

まず、共同研究の成果は、主に発明が誰に帰属するか、それを誰がどう使っていくか、回収された資金がどう分配されるのか、といったところにポイントがある。

注意しておかなければならないことは、たとえば「発明者」とは、本当に発明した人のことを指す、ということだ。

お金をだして研究のスポンサーをやったからといって、企業が発明者になれるわけではない。

その意味で、大学は発明者主義を標榜している。

大学内で行われた発明は、大学の研究者が主をなしている以上、まずは一義的に大学に帰属するとの立場だ。

逆に言えば、企業側の研究者が、本当にその発明に寄与しているなら、その寄与度に応じて、持分を取れることになる。

企業によっては、「面倒だから持分は50:50にしましょう」というところもあるがそれは大学側には通らない。

あくまで、発明寄与度という実態を反映した比率にする、ということだ。

その上で、当初設定された優先交渉の期間に、ライセンスの中身(独占・非独占やライセンス料)の交渉が始まっていく。(続く)


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2007年1月17日 (水)

ビジネスプランについて

2004年の国立大学法人化を機に、様々な学内向けの産学連携に関するセミナーが打たれてきた。

中でも、もっとも頻度が多かったテーマの一つが、ビジネスプランの書き方だったように思う。

大学技術を応用した大学発ベンチャーなどを作っていく上で、まず最初に必要になるのがビジネスプランだった。

あるいは、実際にベンチャーを立ち上げないまでも、研究内容がどのように社会で商品化・サービス化されるのかを考える際、やはりビジネスプランを作っておくと、その技術のポテンシャルがはっきりする。

トヨタの生産システムに端を発する「見える化」というのが、今、工場ではやっているけれども、研究や技術に関しても、ビジネスプランを使うことで、可視化が図れるのだ。

それで、産学連携本部なども、ビジネスプラン作りの啓蒙に努めているわけだし、さんざんやったような気もするのだが、しかし必要なところにはなかなか届いていかない。

最近会ったベンチャーの社長も、技術者で、大学で研究など行っていた経験もあるのだが、やはりビジネスプランというものとは縁が無かった、と言っていた。

「継続は力なり」ということわざにもあるとおり、このテーマのセミナーはもう人が集まらない、と諦めるのではなく、地道な努力を続けることが大事かもしれない。




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2007年1月12日 (金)

週刊エコノミストの記事「大学淘汰」

週刊エコノミスト1/16号が、「大学淘汰」という特集を組んでいる。

それによると、少子化問題はついに一線を越えて、今07年春から、「大学全入時代」へと突入。

私立大学は過当競争に陥り、また地方大学も定員割れが現実のものになってきた。

それを受けて、生き残り策が顕在化している。

たとえば慶応大学による共立薬科大学の吸収に見られるように、大学の淘汰・再編・合併が本格化してきた。

産業界でも、紙パ、食品、交通など成熟産業、国際競争力が低下した電機業界、などすでに大再編に入っている。

夕張市ではないが、地方経済の立て直しも急務だ。

こうなると、日本全体がシュリンクする中、あらゆる分野でリストラクチャリングが求められており、大学もその大きな流れに抗うことは不可能な状況だ。

国立大学わけても東京大学は、まだブランドや授業料、立地といったところで、定員割れ問題とは無縁だろうが、安穏としていれば、長期的にこうした奔流に巻き込まれる可能性はある。

今のところ、総合大学から見た再編シナリオは、自分に足りない学部を補完することが中心のように見える。(東大の小宮山総長のインタビュー記事で、「できれば芸術学部、女子大と合併したい」といっているのが、面白い)

が、産業界の業界再編のアナロジーから言うと、そのうち、「集中と選択」により、世界ナンバーワンの学部・学科をどれくらい持っているか、ということが問われる時代が来ると思う。

大学経営の激変も、まだ前哨戦に過ぎず、これからが本格的な大再編の時代のように思われる。

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2007年1月10日 (水)

最近の研究予算について

先日は、たまたま別な大学の産学連携本部の方と情報交換する機会があった。

話はご多分に漏れず、研究室から実際の産業界に出していくのがいかに難しいか、ということである。

のみならず、この困難さは、研究予算の獲得にも影を落としつつあるのだ。

筆者も、一昨年、昨年と、政府系機関の技術開発プロジェクトの審査員を勤めさせてもらったが、昨今では、研究終了と同時に実際に市場投入されるような成果が求められている。

プロトタイプ技術を作りっぱなしで、あとは論文を書く・・というだけでは、予算も取りにくくなっているのだ。

そこで、民間企業と組んでコンソーシアムで予算申請するわけだが、それでもユーザー・ニーズにはなかなか届かない。

おそらくは、組む相手として、共同開発を行うメーカーだけでなく、その技術を使う潜在ユーザーにも入ってもらう、といった工夫が必要になるのだろう。

その辺の配慮が、まだまだコンソーシアムでも弱い、というのが全体的な印象だ。

今年は、産学連携の取り組みをより市場に近いところに求めていく、というところで、一工夫が必要にると思われる。

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