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2006年11月30日 (木)

共同研究⑦~秘密保持

11月28日より承前)

前回は、研究成果の公表・特許出願のタイミングについて述べた。

しかし、そもそも研究の情報が途中で漏洩してしまったのでは、成果発表も特許出願もあったものではない。

研究プロセスの途上では、秘密保持が条件である。

そこで一般には、共同研究の契約には、この秘密保持条項が盛り込まれる。

具体的には、そもそも秘密保持の対象となるものは何か(What)と、誰がその秘密情報を持っているのか(Who)を、特定しなければならない。

まず、Whatでは、共同研究のテーマ自体を一切外部に秘密とするのか、記録をつけて秘密情報を特定するのか、といったことを書き込んでおく必要がある。

また、公知の事実、他から適正な手段で取得した情報、研究者たちが共同研究前から知っていた情報などで、秘密情報といえないものを除外するのかどうかも、きちんと決めておくべきだ。

この辺は、大学だから、というとではなく民間同士の共同開発などでも、要求される項目だろう。

次に、秘密情報を受領する人間について。

こちらは大学との共同研究では、特に重要と思われる。

というのも、研究者自身だけでなく、研究室に出入りする様々な人々-アルバイトの学生も含む-もまた情報受領者となりうるのであり、共同研究を打っている民間企業からすると、不安を覚えるケースも無くはない。

従って、学生やアルバイトの取扱については、事前の契約書だけでなく、実務的な管理も必要とされるだろう。

そこで問題はHowに移行する。

たとえば、共同研究の重要書類が、大学の研究者の机の上に散らかっている、あるいは山積みになっている、という事態は避けたい。

第三者(たとえばライバル企業)が偶然研究室を訪ねてきて、たまたま書類を目にしたらどうなるだろうか。

よって、書類の整理・保存・管理にも、神経を配りたいところだ。

こうした点を事前にしっかり取り決め、実行することで、秘密保持を行うことが望ましいと思われる。

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2006年11月28日 (火)

共同研究⑥~成果発表のタイミング

(11月24日から承前)

共同研究で考えておくべき項目の一つに、成果発表のタイミングがある。

共同研究で何らかの発明があった場合、研究者(特に大学側)は、できるだけ早くその成果を発表したいと考える。

一方、企業側は、その発明を特許という形にして、ビジネス上の権利を確保したい、と思う。

その際、問題になるのは、発表が先か、特許が先か、ということだ。

特許の成立要件の一つとして、その発明が「公知の事実ではない」ということが要請されている。

従って、特許出願前に発明を公表してしまうと、特許が降りなくなってしまうのだ。

それなら、特許出願まで対外公表を控えたらいいだろう・・というと、そうもいかない事情がでてきたりする。

以下はある先生から話を聞いた話だが、笑うに笑えない話があったそうだ。

それによると、ある共同研究の成果は、たまたま担当チームのある学生の卒業論文(博士論文?)も兼ねていた。

ところが、企業側が、周辺特許なども一挙に固めるために、成果の特許出願タイミングをもう少し先にしたいと思っている。

かくして、その学生は論文が期限内に出せず、あわや留年かという状況になってきた・・

と、こうした困った問題もあるので、現実には、特許上の救済措置が取られている。

これによると、正規の学会などで公表された新発明は、発表から6ヶ月以内に特許申請すれば、「公知の事実」の例外となる。

加えて、最近では、大学の知財部の体制が整ってきたことや、研究者の特許出願に対する意識が高まってきたことから、以前よりは特許と論文のタイミングを戦略的に考えたり、あるいは発表前に力業で特許出願まで持って行く、ということも行われるようになってきた。

いずれにしても、共同研究を始めるに当たっては、有意な成果が出た場合の特許申請と論文発表のタイミングについて、共通理解を持つことが、ますます重要になってきた、と言えるだろう。

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2006年11月24日 (金)

共同研究⑤~その構成要素vol.2

共同研究では、ヒトと場所に続いて、設備の所有と利用の仕方も、詰めておく必要がある。

対象としては、高額な実験装置や大型のコンピュータ等が、想定されるだろう。

このとき、企業が大学の設備を使って、自社の実験を行っていると、これは大学側から企業側への利益供与とみなされてしまう。

特に、大学発ベンチャーの共同研究のケースは、要注意だ。

出自となった研究室と共同研究する際に、果たしてその研究室の設備で行われている実験は、どちらの研究なのか。

大学側の研究者が、当該ベンチャーの役員・株主などを兼務している場合、研究設備を使って得た成果を企業側に付け替える誘惑すら発生しかねない。

こうした問題を回避するため、線引きは重要と思われる。

設備の稼働時間を、大学と企業で分ける手もあるが(週末やアフターファイブは企業が使用?)、曖昧さはぬぐえない。

やはり、企業側の営利につながる実験は、企業側のラボで行うべきだろう。

というわけで、研究室内の実施設備の利用は、そのまま、この研究の成果は誰に帰属するのか、という問題に直結していくのである。

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2006年11月21日 (火)

産学連携セミナー「Web2.0」のお知らせ

今日は宣伝です。

12月4日、産学連携本部が主催する産学連携セミナー・シリーズの一環で、「Web2.0からベンチャーを考える」というタイトルのセミナーを開催することとなりました。

Web2.0の技術と社会へのインパクトを俯瞰した上で、コンピュータ・サイエンスやキャリア・パス等を含めた大学の役割を議論していきたいと思います。

「Web2.0」などの著作で知られる小川浩氏(株式会社フィードパスCOO)に基調講演をお願いし、続くパネル・ディスカションでは、ドリコム株式会社の内藤裕紀社長、アルファ・ブロガーとして知られる橋本大也氏、株式会社シリウステクノロジーズ(東大発ベンチャー)の宮澤弦社長らを交えて「日本の大学はGoogleを生み出せるか」というタイトルで、議論をする予定です。構成とパネルの司会は筆者(五内川拡史)が担当します。

この一連のシリーズは学内向けなので、聴講は東京大学関係者(東京大学の研究者、スタッフ、学生)のみとなりますが、学内の方でご関心ある方がいっらしゃれば、ぜひご参加ください。聴講無料、要登録です。

詳細は、学内掲示板のポスターやチラシをご参照ください。


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2006年11月17日 (金)

共同研究④~その構成要素vol.1

(11月10日より承前)

さて、「共同研究」においては、産と学とがヒト・モノ・カネを出し合うことになる。

当然ながら、どちらがどれだけのものを出したのか、というリソースを明確にしておかなければならない。

まずは、ヒトでいえば、研究者である。

大学側からみると、民間の研究者を受け入れる形が一般的と想定される。

その際、常勤、非常勤、時間や勤務形態などに関して、双方で共通了解をとっておく必要がある。

また、研究場所も重要だ。

研究は、いったいどこで行うのか。

大学の当該研究者の研究室の中で行うのか、あるいは、学内に独自のスペース(研究室)をもらえるのか、はたまた企業の施設で行う(この場合は大学は全体アドバイスや、スペックの一部分を担う)のか、といったことだ。

特に、大学というところは、予算よりも、むしろ研究オフィスのほうが限られていることがままある。

たまたま空いた研究室をどの先生のチームが占有するかで、その先生の政治力が測れる(??)という話もあるほど、スペース争奪戦は大変なのだ。

というわけで、研究の主体(研究者)と現場の確定は、共同研究の大きな構成要素となってくる。

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2006年11月16日 (木)

ノウハウの防衛

先日、あるメーカーの方から、ノウハウ防衛にまつわる話を聞いた。

製造プロセスのイノベーションを特許出願してしまうことは、決して有利とはいえない。

勝手に他社に模倣されても、外部からはうかがい知れず、訴えることができないからだ。

そのため、こうしたプロセスでの発明は、特許としては出願せず、ノウハウとして社外秘にする方針をとっている。

それでは、しばらくして、他社が独力で同じ技術開発を成し遂げ、しかもそれが特許出願されたらどうなるのか。

こちらが特許侵害で訴えられないだろうか。

ということで、そうしたことを防ぐために、同社では、「他社の特許出願より前から、当社はその技術を開発し使っていた」ということを証明する方策を講じている。

すなわち、その技術を文書化・図式化して、封筒にいれ、それを自社宛に投函する。

受け取った封筒は、封を切らずに保管しておく。

日付は郵便の消印で証明されるので、いざとなれば、その技術をいつ発明したか、証拠としてしかるべきところに提出できるのだ。

大手企業は、こうした知財管理をやっているのだけれど、中小企業やベンチャー企業は、なかなかここまで手が回らないだろう。

しかし、今後は特許以上に、ノウハウの価値が重要性を増す時代だ。

ノウハウを守るためにも、こうした手法を取り入れていくことが望まれる。

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2006年11月15日 (水)

アキバ開発

つくばエクスプレスができて、秋葉原から筑波まで、産学連携の新たな拠点作りが進行中のようだ。

東京大学の柏キャンパスも沿線に位置しているし、秋葉原のダイビルには同じく情報理工の拠点も設けられている。

というわけで、アキバ在住(!)の知人が、そうした秋葉原や先端産業の模様を、ブログに書いているので、ご紹介。

「アキバに在住するアナリストのブログ」で、秋葉原のイベントや、ゲーム・中国・ロボットまで、いろいろ書いている。

時間あったら、覗いてみてください。

http://www.cicom.co.jp/blog/archives/2006/11/

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2006年11月10日 (金)

共同研究③~知的財産の共有

産学の共同研究を行う際、一部の企業によっては、「共同研究の経費は全部ウチが出すのだから、知的財産(たとえば特許権)はすべて自社のみの保有にしたい(大学側にも渡したくない)」という要望が出ることもある。

ただ、現状、これは通らない可能性が高い。

なんとなれば、大学側の研究者の人件費は、大学が持っているからである。

共同研究においては、仮に大学が直接経費を一円もだしていないとしても、人的能力と労力の拠出があるので、「一切合財」を企業が負担した、とまではみなされないのだ。

それなら先生の人件費も全て企業側が持てばいいではないか、ということだが、それも実際は難しい。

研究者が大学に帰属している以上、大学での教育や研究義務を負っているからだ。

人件費まで企業に出させるとなると、研究者は兼業申請を大学に提出しなければならないし、それによって行った研究が大学責務との利益相反にならないのか、研究が職務発明に該当しないのか、など厳しいチェックを受ける必要がある。

どうしても丸抱えするなら、研究者には大学をやめてもらって、当該企業に再就職するほうが、形的にはすっきりする。

以上のようなことを考え合わせると、共同研究においては、その成果物たる知的財産は、直接経費の負担にかかわらず、大学と企業の共有になるというのが一般的だ。

もちろん、それは単純に50:50の折半を意味するものではない。

特許法上は、やはり本当の発明人の寄与が問われることになるので、実態に即すことが肝要だ。

誰がその発明に寄与したのか、そのウェイトはどれくらいか、は事実に即して産学の両者で確定していかなければならない。

また共有特許は、その使い方、独占性、サブライセンス、などにおいて、ルールに則った取り扱いを要する。

その点はまた頁を改めて論じよう。

 

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2006年11月 8日 (水)

共同研究②~共同研究と受託研究

さて、産と学の研究活動とはいっても、「共同研究」という形式もあれば、「受託研究」という形式もある。

厳密な定義は難しいのだが、例えば政府系の調査報告書などの定義を見ると、次のようになっている。

まず、産業界からも予算が提供される点、大学の研究者が当該研究に従事する点、はどちらも同じだ。

違う点としては、産業界から研究者や研究活動が提供される場合を「共同研究」、企業側(とその人員)では開発を行わず、もっぱら大学側でのみ研究がされる場合を「受託研究」、としている。

その意味では、国の予算で行う研究は、(国から共同研究者が来るということは少ないので)おおむね「受託研究」という扱いになる。

さて、産業界の予算で行う研究は、どちらの形式もありうるのだが、東京大学のケースではもっぱら「共同研究」というスタイルが主のようだ。

これは、「受託研究」だと、大学側にとって、やや産業界の下請け的なイメージが強くなるリスクがあること、また、知的財産が資金の拠出者側に帰属するリスクがあること、などが影響しているものと推測される。

実際、東京大学産学連携本部の活動も、「共同研究」をいかに拡大していくか、に集中しており、「受託研究」はまず話題に上らない。

資金だけではなく、研究の能力・労力を相互に拠出しあい、知的財産も共同保有(ただし寄与率などは調整の余地がある)する、というのが、基本理念ということだと思われる。

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2006年11月 7日 (火)

共同研究①~現状

産学連携には様々な形態があるが、そのフローの中でも最も川上に位置するのが、共同研究だ。

すなわち、付加価値の大本になる知的財産を、産業界と大学とが協力して作りだそう、というものだ。

ここで得られた成果を、後々、産業界に移転したり、ベンチャー化したりしていくことになる(川下の工程)。

そこで、本ブログでは、これからしばらく共同研究について考えてみたい。

■      ■      ■

まずはじめに、大学と産業界との共同研究の状況をおさらいしてみる。

東京大学の場合、05年度の実績で見ると、民間などとの共同研究資金が41億円で、外部資金受入の11%台を占めている。

他の外部予算は、国や科学技術振興調整費およびその他競争的資金からの受託研究が224億円、寄付金が96億円で、合計では362億円。

この数字をどう捉えるかだが、全体的なウェイトからしても11%という数字は決して大きいといえず、しばらく共同研究が増大する可能性はあるといえるだろう。

実際、共同研究の件数も、7~8年前には200件以下であったが、右肩上がりで増加して、05年度は850件だった。

企業は、失われた10年のリストラの果てに、社内だけではない、外部資源をも活用したR&Dに乗り出している。

大学も国立大学法人化や産学連携の流れ、さらには来るべき少子化時代などもにらんで、外部予算の導入に動いている。

産学双方の期待と希望が合致して、総論としては、共同研究へのニーズは高まりつつあると、言えるだろう。

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2006年11月 6日 (月)

スペース・クチュール・デザインコンテスト

東京大学産学連携本部のスゥです。

先日、東京大学工学部2号館で、「スペース・クチュール・デザインコンテスト」(後援:宇宙航空研究開発機構JAXA http://www.jaxa.jp/)の最終審査会がありました。
このコンテストとは、08年末に米国の有人ロケット開発会社が予定する「宇宙旅行」の公式ウエアを共同開発するデザイナーを決める審査会だそうです。

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昨年、共同研究をした未来プロデュースプロジェクトのメンバーである中須賀真一教授(工学系研究科・宇宙工学専攻・宇宙工学科)が監修をされていると聞いて、「おもしろそう」と思い、お昼休みに見に行きました。

工学部2号館の吹き抜けは、コンテスト会場になっていて、報道陣がずらり!
応募者828点から最終審査の残ったは11人。

音楽に合わせて宇宙旅行服を着たモデルさんが、ファッションショーさながらに歩きます。
会場はフラッシュの嵐。

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私がステキだなと思ったのは、着物をモチーフにした宇宙服。これはJAXA賞をとりました。

最優秀賞は、人形をもった彼女の宇宙服に選ばれました。

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こういう遊び心のあるイベントっておもしろくていいですね。

きっとイベント開催するほうは大変だと思うけど。

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2006年11月 1日 (水)

産学連携体制の再編

先日、ある弁理士さんと話をした。

地方の大学で、特許申請などを手伝っているのだが、なかなかビジネス向けのいい案件が無くて厳しい、との話だった。

その大学にはTLOもあるのだが、国からの予算で成り立っている状況で、5年の期間が切れると、単独では回らない可能性もあるとのこと。

また、どこかで、知財本部まで含めて、再編も考えられるということだった。

東京大学の場合は、学内側の管理を行う知財本部、出願とライセンス・マーケティングを行うTLOがうまく補完関係にあるが、これも一定の出願数・ライセンス数があればこそ機能するのだろう。

90年代の終わりころから、国家戦略として知財強化を進め、04年には国立大学法人化も行われた。

が、実際の運用がある程度進んでくると、その結果も踏まえた上で、様々な見直しも入ってくるかもしれない。

近い将来、複数の大学において、産学連携体制の再編成が行われる可能性があると思う。

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