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2006年10月26日 (木)

利益相反ポリシーを読む

(10月6日から承前)

利益相反について、いろいろ書いてきたが、この問題に対する大学の考え方の大枠は、利益相反ポリシーに策定されている。↓

http://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/kigyou/rieki.pdf


これを読むと、

・研究成果の社会への還元を進める一方で、利益相反は防止しなければならない。
・そのため、広く産業界や行政、社会にも大学活動への理解を求めたい。

組織的な対応としては、

・全学組織として、利益相反委員会、
・各部局には、利益相反アドバイザリー機関、

を、それぞれ設置して対応する、こととなっている。

更に、これら機関が果たすべき役割としては、
セーフハーバールールやガイドラインの整備、審査、啓蒙などがあげられている。

一言追加しておくと、セーフハーバールールが強調されるのは、研究者の萎縮を防ぐためである。

利益相反を防止しようとすると、とかく「あれはするな」「これはするな」の規則集になってしまうリスクがあって、それでは、研究者は最初から産学連携などやる気がなくなってしまう。

したがって、「べからず集」ではなく、あたかも船が安全な港に着くかのように、「この手続きに従ってくれれば、安全に産学連携ができますよ」というセーフハーバールールを整備することが重要なのだ。

利益相反ポリシーは、こうしたバランス感覚の上に成り立っていると、言えるだろう。

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2006年10月24日 (火)

産学連携協議会

最近、東京大学と接点がない企業の方々を訪問すると、もう少し大学の情報が手に入るような機会が無いものか、と尋ねられることが多い。

実際、東大のOBの方で、ベンチャーなど起こされている人でも、産学連携テーマでは、全然接点が無かったりする(自分のゼミとのつながりはあるのだろうけれども)。

というわけで、その際、お薦めしているのが、東京大学産学連携協議会への入会だ。

産学連携に興味を持つ民間企業を組織したもので、入会すると、手っ取り早く、いろいろな学内活動・イベントなどの連絡を、定期的に受け取ることもできる。

意見交換や分科会などのイベントもある。

入会料は無料とのこと。

今は大手企業の参加が中心だけれど、もう少しベンチャー企業なども増えてもいいのかもしれない。

詳細は↓

http://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/kyogikai/images/panfu.pdf


(あと、関係ないですが、試しにグーグル・ガジェットから、NASAの写真をはりつけてみました↓)

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2006年10月20日 (金)

ものづくりの真理

東京大学で「ロボット新世紀」という公開講座が開かれている。

いくつか講義を聴いているが、その中から、経済学研究科の和田一夫先生の講演が、印象に残ったので、ご紹介。

内容は、フォード生産システムについての定説を打ち破るお話で、大変感銘を受けた。

ヘンリー・フォードによる、T型フォードの生産が、近代的な大量生産方式の嚆矢だったということは、よく知られている。

一般には、ベルト・コンベアによる流れ作業こそが、その最大の鍵であった、と理解されている。

ところが、調べてみると、この定説は疑問だらけ。

ベルト・コンベアを入れる前から、既にフォードの生産性は劇的に上がっていた。

また、最盛期でも、複数あるフォードの工場の大半には、ベルト・コンベアが入っていなかった。

つまり、流れ作業が生産性向上の秘密だというのは、間違いだったのである。

それでは生産性向上の本当の理由は何か。

実は、標準化による部品の精度・信頼性の向上だったのだ。

これがあれば、生産ラインの途中や後工程での作り直しがなくなって、やすりも万力も余分な人員も、全部不要となったのだった。

部品の品質を信頼できるなら、据え置き生産でも、流れ生産でも、生産性はあるレベルをクリアできるということだ。

昨日取り上げた藤本先生のものづくり論ではないけれど、標準化と構成要素(部品など)の信頼性のアップ、そして現場の絶えざる創意工夫こそが、生産性の鍵だった。

ことほどさように、定説は我々の眼を曇らせることもある。

真理は大きなキャッチフレーズよりも、小さいことの積み重ねの内に宿っているということか。

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2006年10月19日 (木)

ものづくりの思想

おとといぐらいから、当ブログ(ココログ)は通常メンテナンスとダウンで、復旧に時間がかかり、なかなか更新できなかった。

という話をIT系の方にしたところ、「ココログはまだましですよ。加入者がより多い某ブログサイトは、もっと頻繁に落ちます」といわれてしまった。

以下の話ではないが、Webサービスも、まだ基本品質がなかなか追いつかないというところか。

もっとも無料サービスが多い(広告をはってはいるけれども)から、文句を言えないという意見もあるのだが。

■      ■      ■

さて、先週の金曜日に、経済学研究科・ものづくり経営研究センターの藤本隆宏先生の講演を聴いた。

リーン生産方式(代表例がトヨタ生産方式)の研究で、国際的にも大変著名な方である。

講演は、東京大学産学連携協議会が主催した第7回科学技術交流フォーラム「価値を共創するサービスモデリング」で行われた。

お話の中身は、日本の生産現場で培われた手法を、いかに異分野に応用していくか、というところにあった。

日本の製造業は、現場でムリ・ムダ・ムラを取り除き、設計情報をスムーズに伝達する組織を作り上げた。

特に米国が得意とするモジュール型ではなく、すりあわせ型の製品においては、この日本の方式が威力を発揮している。

その手法は、小売業でも、飲食業でも、建設業でも応用可能である。

 製造業は設計情報を製品という媒体に転写し、サービス業では見えないもの(顧客に対してダイレクトに)に転写するという違いはあるが、「仮説を立てて流れを作る」という一点においては、共通するところが多いのだという。

例えば、イトーヨーカ堂。

本社の指示に従うだけではなく、現場が自発的に情報を整理して工夫をこらす仕組みを小売業に応用している。

現場のパートの人たちに売り場変更の権限を持たせ、暑ければアイスクリーム、運動会があればおにぎり、と次々売り場の目玉商品を変更している。

イトーヨーカ堂の例に限らず、今後は、工場生産現場の経験をもつ団塊世代を、別な産業の指導・育成の場に展開すべく、努力されているとのこと。

ともすると、日本のものづくり力の低下やサービス産業の生産性の低さ(IT産業ですら、そうだ)が嘆かれる昨今、日本が作り上げたリーン生産の思想は、さらに今日的な意義を増していくように感じられたのだった。

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2006年10月17日 (火)

ヘルスケア・チップ

ここのところ、東京大学で何人かの先生方の講演を聴く機会があったので、今週のブログは、少しその紹介(さわりだけだが)にあててみたい。

最初は、東京大学大学院工学系研究科の高井まどか先生。

筆者も前職時代に関わった共同研究プロジェクト(「50年後の未来」)で、大変お世話になっている。

今回は、NPO法人「科学知総合研究所」(通称SKIL)の主催で、診断用のヘルスケアチップのお話を伺った。

さて、今後高齢化が進むと、医療費の高騰が予想される。

それを防ぐ一つの方法が、在宅予防である。

家にいながら、健康診断ができれば、いわゆる生活習慣病-糖尿病や腎臓病、肝臓病等-の進行状況をリアルタイムに補足して、それらが悪化する前に治療が可能となるのだ。

ということで、高井先生は、在宅で健康診断できるヘルスケアチップの開発に、取り組んでおられるとのこと。

開発技術としては、採血の負担を最小化するための無痛針の開発、多項目の診断が可能なバイオセンサーやチップの基盤づくりが、肝になる。

また継続的・定期的に使うことを考えると、コストダウンも避けては通れないところで、1個100円ぐらいになれば顧客側の経済的負担もなくなるが、それにはまだまだハードルは高いとのことだった。

まずは在宅の前に医療機関での使用に耐えうるように、開発を進めている。

将来の日本に必要な技術なので、ぜひ頑張っていただいて、実用化してほしいところである。

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2006年10月12日 (木)

GoogleのYouTube買収②

(承前)

GoogleYouTube買収を見ての、もう一つの感想。

それは、パラダイムの変換がもたらす威力である。

かつて、ウィンテル全盛の時代は、PCに搭載されたCPUOSこそが、競争力の源泉であった。

有力企業が、インテル、マイクロソフトと同じ土俵で勝負すべく、新たなCPUOS開発にまい進した。

しかし、IBMもモトローラもサンマイクロシステムズもネットスケープも、その支配を突き崩すことはできなかった。

Linuxがオープン・ソフトウェアで、わずかにシェアを奪ったことを除けば、競合する商用ビジネスはことごとく討ち死にしてきたのである。

しかし、当時から、このパラダイムを破るものがあるとすれば、これだ、というものは提唱されていたのだった。

それは、シン・クライアント、あるいはASPモデルのようなものである。

クライアントから、バックエンドのサーバー側へと主導権を移す。

当時の通信回線の容量が整わない時点では夢物語だったが、それをはじめて実践しえたのがGoogleだった。

ここでパラダイムは、クライアントからネット側へと劇的にシフトした。

そして、だからこそ、パラダイム変換の先駆者たるGoogleは、YouTubeのような膨大な通信量を食うビジネスを吸収するだけの力があるのだ。

こう考えると、打倒Googleとは、本当に検索エンジンを作ることなのか、という疑問が浮かぶ。

わが国では、300億円かけて国産の検索エンジンを作るプロジェクトが始動するとのことだが、これはなにやら、IBM全盛時にホスト・コンピュータで勝負をかけた富士通、ウィンテル全盛に挑んだCPUOS開発会社(サンマイクロシステムズ、アップル、モトローラ、国産PCなど・・)のイメージと、かぶるのだ。

言うまでもなく、大型汎用機で勝負しているはずがいつのまにか土俵はサーバーやPCに移行し、OS戦争やブラウザー戦争をやっているうちにやはりWebベースへと土俵が移行する。

リングの中心で戦っているつもりが、そのリング自体がマイナーになってしまうことに気がつかない。

逆に言えば、時代のパラダイムを握った企業にとっては、同じパラダイムで勝負してくる会社は怖くない。

真の脅威は、パラダイム変換を起こす企業であり、そのためには野心的な技術が欠かせないのだと思われる。

現状をみると、Webベースはしばらく成長期であり、まだまだこのパラダイムを塗り替えるのは困難だ。

であればこそ、せめて発想だけでも、時代を超えたコンセプトを提唱することが望まれるわけで、出遅れたわが国ではそれがなおさら当てはまるように思われる。

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2006年10月11日 (水)

GoogleのYouTube買収①

GoogleYouTubeを買収した。

買収価額は16億5千万ドル(2,000億円)ということだが、事業を始めてまだ1年半かそこいらしかたっていないのに、これほどの値段である。

日本のミクシィーが、SNS事業開始後2年半あまりで株式上場に漕ぎ着け、2,000億円の時価総額がついた(最近はだいぶ株価も下がってきたけれど)という事例があるが、それをはるかに上回る速度だ。

 この期間の短さと金額を考えると、まさにインターネット・メディア事業こそが、現代ビジネスの最速成長分野であることが実感される。

Googleとしても、自社のGoogle VideoYouTubeに勝てないという現実を前に、この分野での主導権喪失を看過できないということだろう。

今回の買収の件で再確認したことが、二つある。

一つは、新産業創造時におけるトーナメント方式の威力である。

シリコンバレーの新興ベンチャーにとって、株式上場というゴールではなく、M&A(会社売却)というもう一つのゴールが、ダイナミックに働いている、ということだ。

とかく、M&Aでは、会社は買われたほうが負け、というペシミズムが働き勝ちだ。

王子製紙と北越製紙、ライブドアとニッポン放送(フジテレビ)、楽天とTBSなど、いずれも「買われてなるものか」という被買収側の激しい抵抗があった。

ところが、今回のYouTubeは、買収されることが大勝利なのだ。

交渉によって、買収後の経営の自由もある程度確保した。

仮に買収後に何らかの決裂があっても、YouTubeの創業者たちは、あと数百回起業してもありあまるほどの莫大な軍資金を、手に入れている

株式上場という面倒なプロセスを経ずに、これが実現されたのだ。

買収したGoogleの側も、時間をかけずに、このブランドや顧客(トラフィック)を活用していくことができる。

YouTubeが切り開いた平野をそのまま引き継げるわけだ。

日本であれば、新参もの許すまじとばかりに新規分野でも不毛な消耗戦を続け、相手を叩き潰すまで競争して、結局つぶされたほうの経営資源は有効利用されない、ということがしばしば起こりうる。

これでは、産業生成の効率が高いとは言い難い。

シリコンバレーの強みは、あたかも遺伝子が組み換えられるかのように、企業経営リソースの組み換えがダイナミックに起こる点にあり、先端分野ではそれがきわめて重要な役割を果たすのだ。

(続く)

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2006年10月 6日 (金)

利益相反⑧

産学連携における利益相反は、研究者個人が独力でこれを回避しようとすると、多大の労力を要する。

個人レベルでは、リスクの所在を詳細に分析する時間も手間も、かけている余裕はない。

そこで、大学が組織として研究者を守り、もって産学連携に萎縮することのないよう支援を行う、というのが、大学の利益相反問題に対するスタンスだ。

ただ、そのためには、研究者が大学の定めたルールや手続きに則ること、また、必要な情報をタイムリーに大学側に伝達すること、が前提になる。

以前は、「大学に相談すると、うるさいから・・」ということで、研究者個人と企業が自分たちで何でも決めてしまう、というようなことがたびたびあったようだ。

しかし、これでは、いったん何かあったときに、大学組織は研究者を守れないし、守らない。

研究者は、自分の都合を優先した結果、個人でリスクを負うことになってしまうのだ。

従って、産業界はこの辺の事情を踏まえた上で、共同研究者に対して「学内手続きをきちんと踏んでいるかどうか、組織的バックアップを受けているかどうか」をしつこく確認することが、肝要だ。

企業は、往々にして、研究者個人との信頼関係だけで研究や仕事を進めているかのように思い込むが、その研究者がコンプライアンス対応を含めて、大学の組織的支援を受けている状態にある、ということは、きわめて重要なのである。

後になって発明の経緯に何らかの疑義が生じて特許が無効になるとか、あるいは技術移転が利益供与とみなされて、企業のブランドや株価に甚大な影響が出ないとも限らない。

そのため、産業界は、大学の利益相反に関する問題意識を研ぎ澄まし、それらの防止ルールやプロセスに関わる理解を深めていかなければならない。

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2006年10月 5日 (木)

利益相反⑦

産学連携に関わる三つ目の利益相反は、「大学の公共性・社会性と、利益追求の相反」である。

大学には公共機関としての立場があるが、そこに産学連携が喧伝されると、大学の利益追求という相容れない側面が発生するように思ってしまう。

しかし、産学連携は、あくまで公共性を担保した上に付け加えられるべきものだ。

従って、ここでも、利益相反を回避しながら、両者が両立するような形を追及しなければならない。

具体例としては、知的財産の取扱いなどがある。

公共性の立場から大学の発明は広く世の中に使ってもらいたいのだが、これは、知的財産を用いた大学への利益還元を求める、という立場と矛盾する可能性がある。

数学のカーマーカー法特許や、米国ベンチャーのヒトゲノムそのものを特許化しようとした事例など、行き過ぎた知財の確保は、往々にして非難を浴びてきた。

そこで、発明の事実や権利は確保するとしても、それをどのように使っていくかは、ケースバイケースで、バランスを見ながら判断することが望ましい。

一つには、特許で保護したほうが、ライセンス先の企業にも安心感を与え、結果その企業の努力で技術が普及するという事例もある。

逆に、オープン・ソフトウェアのように、著作権は確保しても、自由ライセンスで幅広く世の中に普及してもらいたいという技術もあるだろう。

今後は、どのようなケースにおいて、フリー、オープンに社会還元を行うべきか、はたまたライセンス付与を重視していくべきか、の判断事例を蓄積していくことが、必要になるものと思われる。

 

■       ■      ■

以上述べてきた様々な利益相反に対して、大学は、産学連携の位置づけ、利益相反ポリシーの策定、セーフハーバールールの作成、情報開示、各種窓口やアドバイザリー機能の強化など、一連の施策を進めつつあり、次回以降はその様子を見ていくことにしよう。

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2006年10月 4日 (水)

利益相反⑥

(10月3日から承前)

産学連携に関わる二つ目の利益相反は、「大学組織と個人の利益相反」である。

研究者が、大学の組織人としての立場を使って、個人的利得を得るような何らかの「利益供与」を、企業や自身に行う、というものだ。

具体的には、大学の研究設備を無償で企業に提供する、大学で開発した発明を企業名義に付け替える、当該企業に対して優遇的な売買取引を行う、など様々な形の「利益供与」が想定される。

その上で、研究者は、当該企業から、取引の対価や株式の値上がり益という形で、個人的利益を回収する。

研究者の立場と企業の立場を両方持っていれば、ポケットの右から左に移すかのように、様々な利益・便益の付けかえが、可能なのだ。

実のところ、この点のリスクが産業界に徹底されているかというと、はなはだ心もとない。

ほんの23年前だが、ある企業が共同研究を行うと称して、「大学の資産である研究設備(実験施設やコンピュータなど)を、もっと自由に使わせてほしい。そんなこともできないから大学は駄目なのだ」と言っていたのを、聞いたことがある。

もちろん、これは、利益相反のリスクに照らしてご法度だろう。

すなわち、研究者が兼業や投資を行う場合、そのことと、研究設備、知的資産、時間や労力といった大学側に帰属するリソースとの切り分けを、きちんと行うことが必須である。

設備の利用や学生の活用、知的資産の取扱いなど、研究者自身が裁量権を持つことは多く、大学人として期待される活動と、企業活動は分けて考えなければならない。

不透明な取引は、「李下に冠を正さず」ではないが、それだけで何らかの利益の移転があったのではないか、という誤解を招きかねない。

そこで近年、こうした問題に対応するため、大学はルール整備やマニュアル作り、事例の蓄積を進め、相談窓口なども充実を図っている。

共同研究などにあたっては、利益相反防止のため、制度の理解や早めの相談など、先手先手を打っていくことが望まれるだろう。

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2006年10月 3日 (火)

利益相反⑤

(9月22日より承前)

産学連携において、発生しそうな固有の利益相反とは何だろうか。

「利益相反ワーキング・グループ」の報告書(科学技術・学術審議会)は、利益相反を、責務相反、個人の利益相反、大学組織の利益相反に、まとめている。

それぞれについて、見ていこう。

■     ■     ■ 

まず、「債務相反」だが、これは、研究者が、大学の職務遂行と兼業先(企業)での職務遂行を、両立できない状況を想定している。

具体的には、企業活動の方が忙しすぎて、大学の研究や教育(授業など)に支障が出る場合がある。 

休講が増えたり、あるいは研究そのものに時間が取れない、という状況だ。

反対に、大学での仕事をエクスキューズにして、企業と契約した責務を全く履行しない、という場合もあるだろう。 

実際、多くの研究者が産学連携に二の足を踏む理由の一つは、企業側との契約のせいで、自己の研究や教育活動に支障がでることを恐れるから、ということがある。

これはこれで、責務相反リスクを事前に回避しているという見方もできるわけで、ある意味健全な判断ではある。

ただし、全ての研究者がこうした行動をとると、産学連携の機会損失は極大化してしまう。

したがって、債務相反に関しては、兼業先の業務について「何を、いつまで、どれくらいの労力でやるのか」という事前のプランニング、およびしっかりしたプロジェクト・マネジメントが重要になってくる。

その支援策として、例えば、東京大学では、「Proprius21」という、「共同研究を始める前のプランニング制度」を設けている。

これは、企業からプランニング担当者が来て、一定期間(例えば三ヶ月とか)研究者と話し合いながら、研究の目的や体制、取り組み方、時間とスケジュールなどを詳細設計するものである。

大学の研究者も、こうした制度をうまく活用して、債務相反のリスクが拡大しないよう、余力を持ったプランニングを行うことが望まれるのだ。


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