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2006年8月23日 (水)

ガウス賞、伊藤のレンマ、オプション理論

今日のニュースを見ていたら、伊藤清京大名誉教授に、数学分野の新設された第一回ガウス賞が送られるとのこと。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060822it13.htm

受賞理由は、確率微分方程式を確立したこと。

この方程式は、金融工学分野のブラック・ショールズ式に応用され、実社会の投資行動を説明する強力なツールになりうることが証明された。

ストック・オプションの価格付けにしても、ポートフォリオの構築にしても、はてはヘッジ・ファンドの運用にも、幅広く利用されている。

この功績で、ブラック・ショールズ式の考案者たちは、ノーベル経済学賞を受けとった。

が、その公式の数学的核心はといえば、ほとんど「伊藤のレンマ」の引き写しだった。

その意味で、今回、本家の日本人の先生が受賞なさったということで、少しは溜飲が下がった感じもする。

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とはいえ、この数学そのものは難解だから、筆者がこれを厳密に理解しているわけではない。

あえてオプション価格理論(ブラック・ショールズ式)との絡みでイメージ的に説明すれば、将来の資産価格(例えば株価等)の予測はあきらめ、代わりに視点を資産価格のボラティリティ(変動幅)に移したところが画期的なのだろうと思う。

ボラティリティが高まれば、大きな利益を得る可能性、あるいは大きな損失を被る可能性が高まる。

ところが、オプションはその特性からいって、資産価格が下振れしたときにはオプションを行使しないという選択をとりうるので、これによって損失を限定することができるのだ。

ここから確率的に潜在的な利益を上げる可能性が導かれ、オプション価格が導出される。

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この式は、発表からすでに64年も経っている。

社会的なインパクトが認められるまで40年あまりもかかった。

以前、本ブログで、大学が大学発ベンチャーなどからストック・オプションを取得することも可能になった、という話を書いたが、そのオプションの価格を導くのも、この「伊藤のレンマ」が使われる。

いまや意識するしないを別にして、同式は、社会に大きく浸透している。

突出して優れた学問的業績は、一般社会が追いつくのに、長い時間を要するという見本だろう。

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